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新しいムーブメントとスリムになった横顔を備えた、グランドセイコーの最新コレクションを詳しく紹介しよう。





グランドセイコーに対して、時計愛好家が一般に抱いている数少ない不満の一つは、この時計が比較的厚ぼったいということである。この厚みはある程度までは、グランドセイコーの非常にがっしりとしたムーブメント作りへの固い意志からくる当然の帰結であるが、GSの高品質かつ高価値のスリムな時計が欲しいという欲求は、概して満たされなかった。しかしそれも、新しい手巻きムーブメントを使用した、エレガンスコレクションの新たな4モデルが発表されるまでのこと。ウブロ時計 ビッグバンこの新ムーブメント、Cal.9S63はパワーリザーブ表示を3時位置に、スモールセコンドを9時位置に配している。このキャリバーによって、典型的なグランドセイコーのデイト付き自動巻き式時計の厚さ13mm超より薄い、厚さ11.6mm、直径39mmの腕時計が完成した。


新しい手巻きムーブメントCal.9S63。

 この4種の時計は限定エディションとして発表されており、税抜価格75万円の文字盤が「岩手山」模様のSSモデルと、ゴールドの3つのモデルがある。ゴールドモデルのうち1つは白い文字盤、あとの2つは日本の漆工芸技法である蒔絵で仕上げられている。蒔絵は漆器づくりに使われる手法で、金粉を使って漆塗りの上に絵や文様を描く技法だ。

 SSモデルはとても印象的な仕上がりだ。漆塗りの文字盤のようによく見るほどに感じられる緻密な豪奢さはないものの、その佇まいが放つ際立った凛々しさがあり、「岩手山」模様にはスプリングドライブ スノーフレークのような心を惹きつける自然の空気感があり、ピーコック色の文字盤のハイビート GMTに通ずる鮮やかな玉虫色をしている。

 ゴールドに白い文字盤のモデルは、もはや全く別の時計のようだ。(完全に異なった仕様の文字盤と18KYGケースを備えている)。3つのモデルのうち、こちらは最もクラシックな雰囲気の仕上がりであり、パテックやヴァシュロンやオーデマ ピゲによって19世紀半ばに作られた名高い3針時計と並べても、場違いな感じはしないだろう。(これはドーム型のガラス部分と通常より薄いケースの両方のおかげだろう)。ゴールドの華やかさがグランドセイコーに添えられるとき、そこにはいつも趣深さがある。グランドセイコーが一つひとつの時計に惜しみなく与える細部への研ぎ澄まされた配慮が、SSをもはや幻の金属とみまがうほどにし、それがゴールドとのコンビネーションにより、特別で、慎み深くありつつも豪華なものとなっている。